H事件(平成18年不第10号)について
平成20年3月27日
東京都労働委員会事務局
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命令書交付のお知らせ
当委員会は、下記不当労働行為救済申立事件について、本日、命令書を交付しましたのでお知らせします。
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命令要旨
1 命令交付の経過
(1) 申立年月日 平成18年2月 9日
(2) 公益委員会議の合議 平成20年3月 4日
(3) 命令書交付日 平成20年3月27日
2 事件の概要
申立人組合は、平成17年11月、1年単位の変形労働時間制に関する協定の締結に係る労働者の過半数を代表する者を決定する選挙(以下「選挙」という。)において、変形労働時間制に反対する立場から候補者をたて、選挙管理委員を推薦するなどの運動を展開した。一方、変形労働時間制に賛成する申立外労働組合の組合員で選挙管理委員でもあるZ1は、12月16日、他の選挙管理委員との間の合意がないまま、単独で選挙を実施しようとしたことから、組合執行委員長であるX1が、投票会場で未使用の投票用紙をまとめて投票箱に入れ投票を無効にし、直後に再開された投票においても、Z1から投票用紙を取り上げて投票会場から持ち出すなどしてこれを阻止した。
これに対して、被申立人会社は、12月16日付けで、X1の7日間の出勤停止に処するとの懲戒処分辞令を発した。
本件は、上記出勤停止処分が、X1に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。
3 主文
⑴ 会社は、X1に対して発した平成17年12月16日付出勤停止処分がなかったものとして取り扱い、当該処分を理由に支給しなかった賃金相当額を同人に支払わなければならない。
⑵ 文書交付
⑶ 履行報告
4 判断の要旨
⑴ 会社は、数年来、変形労働時間制を導入することで、繁忙期における受注の集中に対処しており、18年の繁忙期についても、17年12月までには協定を締結し、従来どおり対処するつもりであったことが窺える。これに対し、組合は、17年11月9日以降、それまでの方針を転換し、変形労働時間制に反対する立場を打ち出して、繁忙期の土曜日を休日とするかわりに、従業員は「休日出勤」をして会社に協力し、休日出勤手当の支給を獲得しようという運動を展開した。組合の方針が実現すれば、繁忙期の土曜日の出勤体制は、原則と例外が逆転するため、労働力確保の確実性が低下することに加え、休日出勤手当相当額が経費増となるなど、各方面で会社の負担が増すのは必至であり、協定締結期限が間近に迫った時点での新たな運動方針の通告を巡って、組合と会社の間で対立が生じ、一気に先鋭化したことを容易に推認することができる。
⑵ このような対立状況の中で、11月下旬になっても協定締結の帰趨が決まっていないのは本件事業所のみとなったため、会社は、過半数代表の改選を求めたのであるが、組合X2分会長が協定締結に反対の立場で立候補し、X1とともに選挙準備手続を進めようとすると、選挙運営の公正に疑義があるとして異議を申し入れるなど、本件選挙に対して当初から強い関心を示していた。これに対し、X1は、選挙に対する介入であるとして会社に抗議し、両者間に緊張が生じていた。その後、選挙管理委員として、組合からX3、別組合からZ1が選任され)選挙運営が選挙管理委員に委ねられると、選挙運営を巡る対立は、組合と申立外組合の主導権争いとしての様相を強めた。
⑶ 選挙管理委員両名の間で、申立外組合Z2書記長が意見書に対する反論文を出さなかったことを巡って、未提出のまま選挙の実施を主張するZ1と、これに反対するX3との間で議論が平行線をたどった。X3が反論書の提出にこだわったのは、既に繁忙期の受注時期を迎え、過半数代表の選出が喫緊の課題となっていたなかで、いかにもかたくなな感はあるものの、Z1が単独で選挙を実施しようとしたことは、明らかに選挙管理委員両名の合意事項に反するものであった。それにもかかわらず、会社Y1所長が、選挙管理委員のうちZ1の記名押印しかない選挙公示文書の掲示を許可し、それを巡る騒動においてもZ1を擁護したり、会社Y2課長が、選挙管理委員間のトラブルを知りながら、Z1単独での投票の実施を見守るなど、会社と意見を同一にする選挙管理委員であるZ1に便宜を図った事実が認められる。
⑷ このような経緯を踏まえれば、確かに、X1が、未使用の投票用紙をまとめて投票箱に入れるなどして、投票を無効にした行為には若干不適切な部分があったことも否定できないが、前記のとおり、Z1の行為は選挙管理委員両名の合意事項に反する行為であるにもかかわらず、会社がその行為を支持、追認する姿勢をみせ、投票を中止させよとのX1の要請をも一蹴したこともあり、既成事実が積み上げられてしまうおそれから、やむにやまれぬ事情があったことも認められる。
そして、@X1の行為は、休憩時間中に行われており、また、従業員が主体的にその代表者を選出すべき選挙の場における行為であること、AZ1から投票用紙を取り上げる、投票用紙をまとめて投票箱に押し込むなどの行為はあったにしても、それが暴力と呼べるまでの程度に至ったという事実は認められないこと、BZ1が単独で公示文書を掲示するなどして選挙を実施しようとしたことは、掲示物などには2名で押印するなどの選挙管理委員間の取決めに反する行為であり、X1が「オマエのやっていることは犯罪行為だぞ。」と発言したことも、そのような経緯を踏まえたものであること、CZ1が単独で選挙を実施しようとしたことで選挙管理委員間でトラブルが生じていたことを知っていたにもかかわらず、会社は、選挙を勝手に実施しようとしたZ1の行為は全く問題にせず、これを阻止しようとしたX1の行為だけを問題視したことからすると、X1の行為が、就業規則第40条第5号に定める「職場内の秩序風紀を乱す行為」に該当すると評価することが適切であるか否かについては、疑問があるといわざるを得ない。
⑸ また、X1の行為の背景として、選挙の実施を巡り、半月にわたって組合と申立外組合が対立し、選挙阻止事件の前日からは公示を巡って選挙管理委員間の対立が表面化するトラブルが続いていたのであり、他ならぬY2課長がその件を知っていたのであるから、懲戒処分の発令に当たっては特に慎重な事実確認及び適正な手続が要請されるべき状況にあったといえる。それにもかかわらず会社は、X1の行為の当日に同人の事情聴取も経ないまま直ちに処分を決定し、懲戒辞令を交付している。辞令には懲戒理由が示されていたが、X1に弁明の機会は与えられなかった。しかも、選挙妨害を理由とする処分は会社においてこれまでに例のないものであり、会社の過去の懲戒事例においても問題となった行為の当日に処分がなされたことはない上、上司が部下に暴行等を加え、7日間の出勤停止処分となった事例においては、会社が1か月近くの検討期間を経た後に処分を決定している事実も認められる。
このように、本件懲戒処分が、手続の面でも極めて異例であり、不適正ともいえるものであったことからすれば、仮に行為者がX1以外の人物であった場合、果たして本件と同様に即日の出勤停止処分が発令されたかどうか、大いに疑わしいといわざるを得ない。
⑹ しかも、「再選挙」が、本件出勤停止処分の最中に実施されたため、X1という組織の中核的存在を欠くことになった組合は、当初予定していた投票日直前の選挙活動を十分に行うことができなかった。会社は、このような結果を、すなわちX1への処分が組合の選挙活動への牽制となり、さらにそれが組合の弱体化につながるであろうことを、処分発令の時点で十分に予測可能であったはずである。
なお、会社は、出勤停止処分は、被処分者に就労を禁ずるのみで、会社構内へ立ち入って組合活動をなすことや、選挙で投票することを妨げるものではないとも主張しているが、会社における出勤停止処分がそのような内容のものであったこと、あるいは労使がそのような認識を共有していたことを示す証拠はない。出勤停止処分を受けた場合、通常はたとえ組合活動のためであっても会社構内への立入りは許されないであろうと考えるのが自然であるし、本件においてもX1や組合が実際にそのように考えたことはむしろ当然のことであり、そのことをもって誤解や思い込みであったとされるべき点はない。
⑺ 以上の事実を総合的に勘案すれば、X1に対し、処分理由に疑問がある懲戒処分を、不適正な手続で行った会社の真の目的は、変形労働時間制導入に反対する組合及びX1を嫌悪し、組合の中核的存在であるX1を出勤停止処分にしてその活動を牽制するとともに、組合の弱体化を図り、選挙から組合及びX1の影響力を排除することにあったとみるべきである。
したがって、X1に対する本件処分は、X1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合の運営に対する支配介入にも該当する。
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